新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第10話 魔弾

作:T@S

 

 

 

オソロシヤフスキー大統領の拳銃から発射された弾丸はジャイアンをめがけて飛んでいった。

「うわああああああ、あぶないッ!!!」

風をも切り裂く弾丸を止められるはずがなかった。

だが、ジャイアンはそこらの人間とは違った。

 

ぬ お お お おおおおおおお!!!!!!!

ジャイアンは目にも留まらぬ速さでパンチを繰り出したのである!

「俺様にかなう弾があるわけねえええええええええええッ!!!!!!!」

ジャイアンは無謀にも音速で飛んできた弾丸をぶん殴った。

すると、会議室に竜巻が発生するほどの旋風が巻き起こった。

周囲の人間どもは天井まで舞い上がり、踊り狂っていた。

ジャイ子も先生も出木杉も回転していた。

しかし、オソロシヤフスキー大統領だけは風に巻き込まれことはなかった。

むしろ、動けない様子だった。

ジャイアンが渾身の力で弾丸を跳ね返すと、弾丸はオソロシヤフスキー大統領をめがけて飛んでいった。

 

 

アッーーーーーーーーーーーーー、……

 

悲鳴は最期の最期まで発せられずに途切れた。

風が治まり、床に叩きつけられた者たちが見た光景は、既に事切れているオソロシヤフスキー大統領の無残な姿であった。

「し、死んでいる…。」

オソロシヤフスキー大統領は跳ね返ってきた弾丸によって心臓を一瞬にして貫かれ、間もなく死亡した。

「くくくく…。」

ジャイアンはひたすらせせら笑う。

「ヒッヒッヒッ…フフフッフフフッ…アヒャヒャヒャ…ポギャーハッハッヒャーッ!!!

ウェーーーーハッハッハッ!!!!

ジャイアンはオソロシヤフスキー大統領を見て笑い続けた。

「こ、こいつ…マジで気違いじみてやがる…!!」

その場にいた代表者は顔を青ざめるしかなかった…。

これは漫画の中の出来事だと思いたいが、現実だからどうしようもないのである。

「ざまあみやがれッ!!俺様に逆らうものは…みーんなこういうみじめなみじめな情けねえクッセー死に方をするんだぜ!!

変な気を起こさなきゃ、あったかい布団の中で死ねたと言うのになッ!!死に損とはまさにこのことだッ!!」

ジャイアンはまさに狂気そのものと化していた…。

撃たれる前の焦りはどこに行ったというのか。

「た、確かにオソロシヤフスキー大統領に問題があった…。会議の場に銃を持ち込むなど、言語道断だ…。」

出木杉は冷静を装いつつ、自分が今置かれている状況を整理しようと必死だった。

だが、彼は何故ジャイアンが弾丸を跳ね返せたのかわからなかった。

いや、むしろわかりたくもなかった。

「ね、ねえ…どうするザマス…?」

「ねえ、って…そんなモン、オマエ…」

「……………。」

オフラン大統領とリー提督はどうすればいいかわからなかった。

一方、キム総書記は無言であった。

既にジャイアンに服従するつもりだったクリキントン大統領もジャイアンの力を目の前に言葉を失うだけであった。

「…んーすまんな君達。ちょっとジャマが入った所為で会議が中断してしまった。」

ジャイアンはとりあえず気持ちを切り替え、会議を再開させようとしていた。

しかし、会議の結論は既にジャイアンが主張したとおり、全員契約書にサインしろというものである。

一方で、先生がオソロシヤフスキー大統領の亡骸を外へと運び、会議室は平穏が訪れようとしていた。

「さーて、君達、この契約書にサインしてくれるかなー?」

4人は黙って契約書にサインし始めた。

しかし、1人だけ契約書を手で丸めて床に置いた。

そして靴で踏みつけ、窓から放り投げててしまった。

その勇敢な者は出木杉であった…。

「お、おい…出木杉…お前…何したか…わかっとるのか…?」

「もちろんだ。僕はこんなバカバカしい契約を結ぶ気は微塵もないんでね。そこらの下衆と一緒にされては困るな。」

出木杉はジャイアンの問答をあっさり切り捨てた。

するとジャイアンの黒い拳に力がジワジワとみなぎる。

「お前…その勇気は褒め称えてやる。しかし…口は災いのもとっていう言葉を知らないようだな…。」

ジャイアンは歯を食いしばり、肩に力を入れ、眉間にシワをよせた。

「俺様のジャマをするやつは絶対に許さん…。」

ジャイアンは白目をむき、狙いを一つに定めた。

そして叫んだ。

ドガアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!

ジャイアンは全身を出木杉めがけて突進した。

くたばれえええええええええええええッ!!!!!!!

ジャイアンの怒号が練馬全体に響き、天地を揺るがした。

狭い会議室の壁にはヒビが入り、ガラスは粉々に砕け散った。

そしてジャイアンは出木杉に突撃した。

BUOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!

 

 

 

「や…やったか!?」

爆風による煙が消え、無残な光景が見えるはずであった。

「………いないッ!?」

そこに出木杉の姿はなかった。

「か…完全に燃え尽きたのか!?血すら残ってないぞ…。」

「いや…そうではない…!!当たった感触すらなかったんだよ!!!」

出木杉は一瞬にして蒸発したかのように姿を消した。

それはジャイアンが放った衝撃によるものではなく、自発的に消えたと判断できるものであった。

「あーっ、出木杉の戦闘機が飛んでくぞ!!」

クリキントン大統領が指したその先には、校庭に停めてあった戦闘機に乗り込んで脱出を図ろうとする出木杉の姿であった。

出木杉は機体のエンジンを動かし、そのまま離陸していった。

「何故あんなところに…!?ンナロー、追えー!!追えー!!」

ジャイアンが指示を出すも時既に遅し、戦闘機は旋回しながら音よりも速く飛び去っていった。

武装解除されているため、攻撃こそはできないものの、その分機動力が上昇していたのだ。

「覚えてろよ出木杉!!そのうち絶対に見つけ出してギッタンギッタンのメッタメタにしてやるッ!!!」

 

 

 

「残念だったね武君。人でない者は君だけじゃないんだよ…。クックックッ…。」

 

 

 

こうして、練馬首脳会議は波乱によって幕を閉じた。

会議の結果、アメリカ、フランス、中国の3カ国がジャイアンとの契約を結ぶこととなった。

なお、北のキム総書記はドサクサにまぎれて会議室から逃げ出したことが発覚したが、専用機がポンコツ機体だったため追撃を振り切れずに撃墜されてしまい、

落ちた戦闘機から苦し紛れに出てきたところを虫取り網で捕獲された。

その後、キム総書記がどうなったのかは言うまでもない。

 

こうして、ジャイアンは大国を自分の物にすることができた。

しかし、練馬の外、日本だけは手に入らなかった。

ルールに乗っ取ったわけではなく、ジャイアン自身が日本に対して「何か」を感じたためである。

その「何か」が出木杉のことなのか、それとも他の何かなのかは、ジャイアンの周囲のものですら知ることができなかった。

 

「日本だけは俺様たちに対抗できる手段を持っている…。無用心に攻め込むんじゃないぞ。いいな。」

ジャイアンは意味深に部下にそう告げるだけであった…。

 

世界は再びパニックに陥った。

ロシアなどの首領を失った国家はジャイアン教信者とアンチとの衝突により大混乱となり、もはや国家としての機能を失っていた。

暴力が人を支配するようになったのである。

アメリカ・フランス・中国の三国は国内に潜むアンチを徹底的に狩り、秩序を保っていた。

一方で、軍隊は無法と化した国家に攻め込み、暴力と略奪に勤しんでいたのである。

特に、モヒカン頭の集団が一般市民を汚物呼ばわりして大量浄化作戦を行ったという。

ジャイアン教によってもたらされた平和はたった1週間だけの平和であった。

もはや世界はどうにもならなかった。

その解決方法はジャイアンにもわからなかった。

しかし、ジャイアンにとってはどうでもよかった。

自分が楽しければそれでいいんだから。

 

「ジャイ子ー!!ご飯おかわり!!」

 

ジャイアンの野望はまだ終わらない。

まだ第一歩を踏み出しただけにすぎなかったのだ。

 

第一部・ジャイアン編

 

 

 

 

第二部・のび太編へ続く

 

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