新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第11話 赤い狂気
作:T@S
ジャイアンが世界征服した一方で、のび太は無人島である四畳半島で見えない敵と戦っていた。
修行とも言うべき無人島での生活は、のび太の心と体を狂わせていた。
髭はボーボボボに伸び、ギャリギャリに痩せ細り、まるで乞食のようだった。
幸いにも食料は少しは調達できた。
その食料は木の実だったり、やっとの思いで捕まえた魚だったら、それはご馳走である。
酷いとき、いや普段は雑草や虫を食べるしかないのだ。
当然食用ではないので、不味い。とにかく不味い。
最初は口から戻すこともあった。
しかし、慣れてしまえばどうということはない。
慣習はおそろしい。
さて、そんな生活ばかり続いているわけだが、のび太はどうすればいいのだろうか。
まず四畳半島から脱出しようにも、イカダを作る技量も無いし、方角すらわからないからどうしようもない。
泳げればいいのだが、ご存知のようにのび太は泳げない。
海に出たところで鮫のエサになることは目に見えている。
鮫に食われなかったとしても、海の藻屑と化して魚のエサになるだけである。
ただ助けを待とうにも、船や飛行機らしきものは全く見かけない。
のび太は孤独という孤独に耐え切れず、無意識のうちに廃人と化していた。
どのくらい時間が経ったのかわからない。
最後に言葉を発したのはいつだったのか覚えていない。
孤独、孤独、絶望、孤独、憂鬱ときどき喪失、狂気のち絶望。
廃人と化したのび太は、さらなる精神異常によりメガネザルへと退化しようとしているのであった。
貴方は人間が猿へ退化するなんてありえないだろうとお考えだろうが、実際人間は猿の進化形である。
たまたま頭が発達しただけなんじゃないか?
それと声帯が発達したことか。
それがなくなれば、猿の進化形である人間は猿に退化するはずだ。
決して比喩的な意味ではなく、知能を失った人間は猿そのものである。
猿への退化を辿っているのび太は、幻覚にも悩まされていた。
幼い頃の光景やドラえもんたちとの楽しい日常が目に映っていた。
まるで夢を見ているかのような感覚である。
はっきりとは映らず、経年劣化したフィルムのように映っていた。
ノイズが混じり、ぼやけたりもしている。
酷い場合はグニャグニャに見えたりする。
そして、たまに妙な光景が映る。
何故か地球儀のようなものが見える。
するとその地球儀は突然パカッと割れ、赤っぽいドロドロした黒い液体が流れ出る。
何を意味しているのかわからない。わかりたくもない。
もしかして自分自身の運命を示唆しているのか…?
だとしたら…いずれそうなる運命なのか…?
わ、わからない…!
だ、だれか…
タスケテ
タスケテ
タスケテ
タスケテ
タスケテ
タスケテ
タスケテ
タスケテタスケテ
タスケテタスケテタスケテ
タスケテタスケテタスケテタスケテ
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
タ
ス
ケ
テ
のび太は小屋の中で、とうとう意識をほぼ失った。
壁一面には自らの血で書いた「タスケテ」という記号にも近い文字があった。
そしてのび太は餓死を待つだけとなった…。
ようやく狂気から開放される…。
ただその時を待つ…。
「あわれな者よ…」
(ダ、ダレ…?ハナシカケテイルノハ…?)
誰もいないはずの島なのに、声が聞こえた。
いや、心に直接話しかけていた。
「わしは…」
(…?)
「神じゃ。」
続く