新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第2話 革命

作:T@S

 

 

思わず家から飛び出したのび太は行き先に迷っていた。

町の上空をタケコプターで飛び、下を見下ろしている。

家では玉子がドライもんを倒してしまったことを知らずにのび太は行き先を探している。

「そうだ、静香ちゃんの家に行こう。」

静香の家…。

そこはのび太にとっての休息所である。

空を飛んでいるのでありとあらゆる障害に遭遇することも無く、容易に辿り着いた。

「静香ちゃんいるのかなー?」

のび太は犯罪者の如く2階の窓に近づき、静香の部屋を覗いた。

しかし誰もいない。

「と、いうことは…」

のび太はよだれを垂らした。

「お風呂だなぁ。ゲヘヘヘヘ。」

のび太はそのまま下の方へ移動した。

ここまでくればもう犯罪者だ。

そしてのび太は窓越しに風呂場を覗いた。

風呂場には湯気が深く立ち込めており、浴槽の部分に影がかすかに映っているのが見える。

「やっぱりね…。」

ここでのび太はすかさず窓を開けて叫んだ。

ガラガラッ

「しーずかーちゃあーん♪」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

何やら異様な空気が流れ始めた。

空気の振動がのび太の皮膚に伝わる。

その時、湯気が消えた。

その光景にのび太の体温は絶対零度になり、凍り付いた。

うわあああぁあああぁあああ!!!!!!!!

一瞬だけの現象だったが、のび太は悲鳴をあげずにはいられなかった。

そして時間が止まった。

 

そこにいたのは美しき静香ではなかった。

醜く太り、細い目をした怪物がいた。

ジャイ子だった。

あのジャイアンの妹の。

彼女が浸かっていた浴槽の湯には大量のガマの油が浮いていた。

そして時が再び動きだした。

イヤアアアアアアア!!!!!!

ジャイ子も汚い悲鳴をあげた。

その悲鳴に飛んでいたハエやカマドウマが死滅した。

 

「の、のび太さんに見られるなんてぇ!!!お兄ちゃんにも見られたこと無いのに!!!ましてやモテ夫さんにも見られたことの無いこのあたしがあああ!!!」

のび太はあまりの醜態を見たことにより魂がフワーリと体から抜けていった。

そして、のび太の視界にはお花畑が映った。

眺めてみると三途の川も見えた。

だが魂はすぐ体に戻った。

なんとかのび太は落ち着いたようだ。

しかし当のジャイ子はかなり危険な状態であった。

ジャイアンやモテ夫に見られたことの無い自分の体をのび太に見られてしまったのだ。

ただで済むわけがない。

「のーびーたさん…」

「な、なんだいジャイ子ちゃん…。」

ジャイ子が迫ってくる。

のび太は逃げようと思ったが逃げられなかった。

どうやら足になにか絡まっているらしく、それはジャイ子のオーラであるとのび太にはわかっていた。

ただ、外側を向いているのが不幸中の幸いか。

それでも怯えるのび太にお構いなくジャイ子は近づいてくる。

のび太は震えながら質問した。

もちろん、死ぬ覚悟で。

 

「ジャ、ジャイ子ちゃん、ひ、ひとつ聞いていいかい…?」

「何よ?」

ジャイ子の眉間の皺が微妙に寄った。

「な、なんでジャイ子ちゃん、静香ちゃんの家に、いるの…?」

誰もが気になる質問をのび太はジャイ子にぶつけた。

そりゃそうだ。

なんでジャイ子が静香の家にいるんだ。

こんなことありえないではないか。

おそらく。

「そ・れ・は・ね…」

ガクガク。

ジャイ子はのび太の耳に口を当てて言った。

唾が微妙に耳の中に入ったような気がしたが、そんなこと気にする場合ではなかった。

それと同時に恐怖の一言が耳に入ってきた。

「のび太さんがあたしと婚約してくれたら教えてア・ゲ・ル。」

 

 

う、うげえええええええええ!!!!!

 

 

ブルーン

のび太は無心で逃げた。

足に絡みつくジャイ子のオーラを気合で切り、時速100キロの速さで静香の家の庭から脱出した。

背後にジャイ子の気迫を感じたが振り返る暇もなかった。

必死に逃げたおかげでなんとか振り切ることが出来た。

 

のび太は何が起きたのかわからなかった。

しかし一つだけわかっていた。

ここは地獄であると…。

まだ死ぬのは早い。

だから逃げた。

 

何故静香の家にジャイ子がいたのか…。

のび太は幻でも見ていたのだろうか。

あのジャイ子は本当は静香では無かったのだろうか…。

のび太はひたすら町をさまよった。

まだ意識がはっきりとしていないようである。

「しーずーかーちゅわーん。」

 

 

 

ざわ…ざわ…

「なんだろう、この黒いの。」

「重くて動かないよー。」

2人の子供が路地で遊んでいた。

その子供たちは路地に転がっていた黒いダルマと思しき物体に触っていた。

だが、129.3kgあると思われる物体を子供が動かせるわけがない。

「ちぇっ、つまんないの。」

子供は台詞を吐き捨て、物体を蹴ってその場を去っていった。

 

 

 

 

「ハッ!ここは…。」

のび太はいつのまにか空き地の土管の上に寝ていて今、目が覚めた。

「僕はどうやら…変な夢を見ていたのかな。気持ち悪い夢だった。」

果たして、あれは本当に夢だったのか?

家を出てからどれくらい時間がたったのかわからない。

だが、何故か静香の家に行きたいとは思わなかった。

でも家に帰ろうとも思わなかった。

そんなのび太を嘲笑うがのごとく、雨が降ってきた。

ザーーーーーーッ

「……………雨か。」

 

 

 

 

 

 

「おいのび太。」

変な声がのび太を揺さぶる。

「起きろよのび太。」

のび太は目が覚めた。

だがそのとき視界に入った物は…!

 

うわあああああああああ!!!!!!!!
ジャイ子ぉぉぉぉ!!!!

 

「バカヤロォ!!僕はスネ夫だ!!」

「え…?」

 

どうやらのび太は寝ぼけていたようだ。

ジャイ子ではなく、スネ夫だった。

雨はすっかり上がっており、そろそろ日が沈む頃であった。

「ところでスネ夫、なんで空き地に来たの?」

「それはだな…。」

スネ夫のただでさえ怪しい顔がさらに怪しい顔になった。

 

「今日、日付が変わる午前0時にここで世界一危険なことが起きる!!」

 

「何が起きるの?」

 

「革命…だよ。」

 

革命…すなわちレボリューションである(意味不明)

それはこの町全体が今、異様な雰囲気にたたされていることを物語っていた。

一人の男によって。

「ジャイアンの怪しい行動はどうやら冗談ではなかったみたいなんだ…。」

「それってどういうこと?」

「さっき剛田雑貨店の前を通ったら物凄い行列が出来ていたんだ…。」

それは20分前のことであった。

スネ夫が剛田雑貨店の前を通ったとき、大量の人々が押しかけていた。

まるでラーメン屋の行列の如く。

「驚くのはこれだけじゃないんだ。その行列の中には先生や神成さん、そして小池さんまでもがいた!!」

なんと行列の中にこの3人が混ざっていたのである。

スネ夫が彼らに話しかけても全く動じなかったという。

小池さんは相変わらずラーメンを食べていたのでそれに夢中だったのかもしれないが。

「そしてこんな物を見つけてしまった…。」

スネ夫がポケットからくしゃくしゃになった一枚のB5サイズの紙を取り出した。

 

人間どもよ!あちまれ!

ジャイアン教

拝啓 私は剛田武という者です。
この度、世界に革命をもたらすために新たなる新興宗教団体の設立を宣言いたします。
今、世界は常に恐怖に追われています。
その世界を救うため我々ジャイアン教が救世主となるのです。
ジャイアン教は偉大なる神・ゴーダシッタカジャイアンの教えであるジャイアニズムに基づく宗教です。
心配は全くいりません。
ジャイアニズムは愛と正義の教えであり、世に繁栄する悪魔を倒し平和をもたらす究極の教えであります。
そしてどんな人々であろうと私は歓迎します。
ジャイアン教は教祖も信者も一体となり、平等であります。
みんな心の友になれるのです。
ジャイアニズムは宇宙です。すなわち宇宙はジャイアニズムです。
ちなみに宇宙は「そら」と読むのが正しいと思います。


この紙を見て、私の心のマグマを感じとったあなたは今すぐ私の家に来てください。
剛田雑貨店と描かれている看板が目印なのですぐわかると思います。
それでもわからない人はおうちの人に聞きましょうね。

そして今夜0時、空き地でリサイタルを開きます。
私とともに歌ってジャイアニズムと融合しましょう。

なお、私の家と空き地に来なかったやつには私がぶん殴って差し上げます。
その冥土の土産として肉体を神に捧げますので、そうなりたい人は首を長くして待っててくださいね。

私は心の友を待ってます。

それでは。

草々

 

 

「な、なんだよこれ…。」

わけがわからない…。

ただそう受け止めるしかなかったのである。

 

 

 

続く

 

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