新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第6話 新世界
作:T@S
午前0時まで後10分。
そのときに、剛田雑貨店の超巨大パラボナアンテナからジャイアンの歌が発信される。
発信された音波は歌として流れるだけではなく、電波で世界中の通信機器をもジャックするという。
だが、日本をはじめ、各国の政府はまだそのことに気がついていない。
ジャイアン教なんてただのネット上のカルトとしか思ってないからだ。
練馬区が異常事態になってるのも、ドラえもんという存在があるからどうせいつものことだとしか思ってない。
よくよく考えれば地球をも破滅させることができるロボットを放置するのも、ちゃんちゃらおかしい話である。
漫画だからといえばそれまでなのだろうが。
世界各地での暴動はジャイアン教という日本のカルトが呼びかけているということまでは各国の政府の耳には入っている。
だが、それが日本のどこから発信されているのかはまだ明らかになってない。
FBIの隊員が練馬区が怪しいということで密かに潜入したとの報告もあるが、ジャイアン教にやられた、もしくはジャイアン教に洗脳された、などの疑いで消息不明となっている。
そもそも世界中のネットワークがジャイアン教に仕業により麻痺しているため、無線などの古典的な通信手段しか使用できない。
唯一生きているネットワークはテレビやラジオぐらいである。
ジャイアン教はそれを狙っているのである。
そして時計の針は午前0時を指した。
15万人以上の信者が集合する中、剛田雑貨店ではジャイアンがマイクを握り始めた。
「お兄ちゃん、いよいよね!」
こちらは、久々に登場したジャイ子。
彼女は「シスタージャイ子」としてジャイアン教ナンバー2の地位に立っている。
ジャイアン教のサイトのために一肌脱いだ存在として信者にも知られている。
一方、ジャイアンの母ちゃんはというと…。
どこにも姿がない。
ジャイアン教のサイトには「聖母ジャイアン様の母」という位置づけにはなっているが、剛田雑貨店にも、集まっている信者の中にも姿はない。
ちなみにジャイアンの父ちゃんもいない。
というか、ジャイアンにとって存在が忘れられているようである。
理由は定かではないが、ジャイアンを止めることができる存在がいない。
そして始まった。
「世界中のみんなああああああああああ!俺様はこの腐りきった世の中に輝きを取り戻すために現れた、ジャイアンこと剛田武さまだああああああああ!!!!!!!!!!」
すると、世界中のテレビやラジオの電源が自動的に入った。
対策を練っていた各国の政府のテレビにもその姿は映し出された。
日本時間では真夜中ではあるが、その声を聞いて、寝ている人がいっせいに起き始めた。
「今から俺様の歌をみんなにプレゼントするぅ!!!!そして腐りきった政府に告ぐ!!!」
各国の政府が息を飲んだ。
「この歌はお前らへの宣戦布告でもある!!!この歌をもって俺様はこの東京都練馬区にジャイアニズム国家の独立を宣言するッ!!!!」
「な、なにぃ!?」
初めて驚く政府の要人。
「急げ!東京都練馬区に国連軍を派遣しろ!」
だが時既に遅し。
「いくぜぇ!!!」
そして悪夢は起きる。
「ぼぉぉっぉぉぉれぇぇはぁぁズァァァァイイヤーーーーーーンッッッッ!!!!!!!!!!!」
「うわあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
ボギャーン!!!!
世界中で次々にテレビが爆発した。
そして聞いていた人は頭が錯乱状態に陥った。
「ぎゅううわあああぁぁぁけぃぃぃじゅわいちょーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
その怪音波は天地、いや地球を揺らした。
日本中では怪音波が響き渡り、時空の歪みが引き起こされた。
「きけぇぇぇぇんんんかぁぁぁぁむぅぅぅぅてぇぇぇぇくぃぃのーーーごごごごごごごとととこぉぉぉぉぉだぁじぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
もはや「おれはジャイアンさまだ!」の面影すらない。
奇声と化したジャイアンの歌は雷や地震、そして津波をも引き起こした。
そして火山をも噴火させた。
さらにはマントルをも動かした。
「ああああああああああいいいすぅぅぅぅぅぅるぅっぅぅぅぅぅぅきぃぃぃぃとぉぉはぁぁぁぁぁばばばばばばばばばばばば!!!!!!!!!!!!!!!」
本人は「愛する人はラララー」と歌ってるつもりなのだろうが、もはや何を言っているのかわからない。
「ホゲエエェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
大災害により世界中はパニックと化した。
アメリカや中国では津波や竜巻、機械機器の大爆発などにより多くの都市が壊滅した。
ビルは崩壊し、街は焼けて焦土と化し、多くの人が息絶えた。
日本に近いロシアでは海抜が低下し、国土の40%が海に沈んだ。
インドは大陸から分断され、再びインド大陸となった。
アフリカの砂漠の砂は半分以上が吹き飛び、その砂がヨーロッパ各地に降り注ぎ、一部の都市は砂に埋もれた。
太平洋上では伝説のアトランティス大陸が浮上した。
オーストラリアははるか東へ移動。南米と近くなった。
日本では災害による被害はそれほど多くない。
それよりも時空の歪みによって多くの人が赤ちゃんになったり、老人になったり、さらには退化してサルになった。
中には若返って大喜びする人たちもいるが。
しかし日本以外の国々では大暴動が発生し、錯乱した人々が次々に殺し合っていた。
暴動が収まったときには地球人口がそれまでの半分にまで減少した。
それまでの世界は消えた。
新しい世界ができたのである。
3時間にも渡る大熱唱の末、ジャイアンは燃え尽きた。
力を最大限に出したパラボナアンテナは焦げ落ちて、役目を果たさなくなった。
「みんな……俺の歌を聞いてくれてありがとう…。このことは死んでも永遠に忘れないぜ…。」
そしてジャイアンは真っ白になった。
別に死んだわけじゃない。
疲れて寝ただけだ。
「がぁぁぁ〜〜〜〜〜〜。」
3.5センチのデベソを露出して豪快ないびきをかいている。
信者も疲れたのか、みんな寝てる。
ただし、一応防衛だけは機能しているようである。
各国の政府は軍隊派遣どころではなくなった。
何しろ世界地図が大幅に書き換えられてしまったのだ。
たかがジャイアンの歌ごときでこのようなことになるとは想像できなかった。
はっきり言ってこれはジャイアンの歌ではないだろう。
宇宙をも超越した一種の破壊兵器である。
まずは、何故このようなことができたのかを研究することが先であろう。
国連も本部が壊滅状態になってしまったため、臨時的に災害による被害をあまり受けなかった沖縄に本部を置くことになった。
日本政府もジャイアン教を恐れて東京から離れ、長野県へ本部を移した。
今のところ、ジャイアン教はジャイアンが爆睡中であるため、話し合いの機会はもたれていない。
しかし、国連側はジャイアンが再び活動した際に議会へ招くとのことである。
実際のところ、国連側もジャイアン教を脅威とみなしており、普通の軍隊だけでは敵う相手ではないとわかっている。
だからこそ話し合いで解決せなばならない、と考えている。
他国を侵略しない条約を締結し、練馬区を国家として独立させるという提案も出ているほどである。
果たして世界の運命は…。
のび太はどうなったのかというと…。
一応、時間軸はジャイアンの宣戦布告の後ということにしてある。
だが、不思議なことにジャイアンの歌による被害は受けていない。
「し、静香ちゃん…?」
「そうよ。あたしは静香よ。」
「なんでこんなところにいるの…?」
「ここは四畳半島。あたしは世界の危機を察してここに逃げたのよ。」
意外なことに、ここは四畳半島であった。
と、なるとスネ夫もいるはずだが、どうやらいないようである。
「そういえばさっき、自宅の地下シェルターに非難していたスネ夫さんから連絡が入ったわ…。」
「…!?」
「どうやら武さんがとんでもないことをしてくれたそうね。」
「いったい何を…!?」
「話せば長くなるわ…。とりあえず説明は後にして、のび太さんは国士無双拳を習得しなきゃならないわね…。」
「こ、国士無双拳…いったいなんなんだそれは…。」
「詳しいことは…出てきていいわよ、ドラミさん!」
「ド、ドラミちゃん…!?」
別の部屋のドアがゆっくりと開いた…。
そこから出てきたのは天使か、それとも悪魔か。
続く