新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第7話 真実

作:T@S

 

そこには、ドラミがいたのである。

体は黄色くて、耳がない代わりに赤いリボンをつけている、あのドラミである。

しかし、どういうわけか本来のかわいさは見当たらない。

「ド、ドラミちゃん…なのか!?」

何故かのび太は驚きを隠せない。

「お久しぶりね、のび太さん。」

ドラミは不気味な笑みを見せる。

その表情は普段のあのかわいさからは想像もできないような、何かをたくらんでいる様子である。

のび太の隣にいる静香も普段とは一味違う面を見せている。

だが、のび太にとってはそんなことはどうでもよかった。

「ドラミちゃん、まずはこの僕が今置かれている状況を教えてほしんだ!もう何が何だかわからなくて頭が狂っちゃいそうなんだよ!」

「いいわ…。今、世界は大変なことになってるのよ。ジャイアンさんがメチャクチャにしたのよ。」

「と、いうと…?」

するとドラミは衛星写真と思しき地球の写真を見せる。

「これは、今あたしたちがいる地球よ。」

のび太は不思議そうに写真を見る。

「これは…へえー、これが地球か。」

「あんたバカぁ!?」

静香は思わず突っ込みを入れる。

「よく見なさいよ!ここが日本でしょ!?」

「それはわかるよ。でもそれがなんなの?それにしても地球って大きいよね。」

「…。」

静香は呆れるだけであった。

やっぱり馬鹿は馬鹿なのである。

「のび太さんには難しすぎる話だったみたいね…。ま、この際いいわ。簡単に言うとね、今、世界はジャイアンさんの手に支配されかけているのよ。ジャイアンさんは宗教を結成して世界各国にケンカを売ったのよ。」

「な、なんだってぇーーー!!??」

今更驚いても遅いが、どういうことかわかったようである。

「そしてまるで22世紀の道具を使ったかのように地球をメチャクチャにして…。このままではあたしが住む22世紀にも影響が出るかもしれないの。」

のび太は思い出した…。

ジャイアンが異常な行動を見せ始め、町の人もおかしくなっていたことを。

特にあの先生には殺気が迫るものがあった。

「で、これから僕たちはどうすれば…?」

「そうねえ…。あいにく今お兄ちゃんが行方不明なの。だからあたしたちで何とかするしかないわ。」

その割には、ドラミは意外と落ち着いている様子である。

ゴキブリが出ても驚きもしないくらいの冷静さである。

何か対抗策があるかと思っているようだ。

「で、のび太さんはこれから国士無双拳を習得しなければならないのよ。」

「だから国士無双拳ってなんなんだよぉ!」

 

「国士無双拳…それは人間が持っている潜在能力をコントロールする術よ…。

普通の人はもちろんのこと、特に、のび太さんは秘められた超人的な力を持っているのよ。

でもそれは時として重度の痛みや精神崩壊時に”暴走”として現れる…。

次々に人を殺すのはもちろん、その力は地球を滅ぼすほどのものだわ。

22世紀では実験によって”暴走”を意図的に起こしたことによりアメリカのコネチカット州が壊滅に陥ったという記録があるのよ…。

その”暴走”した人間は核ミサイルで始末することに成功したけど。

で、新たに”暴走”せずに力を発揮できる方法が発明された…それが国士無双拳なのよ。

発明したのは意外にもセワシくんのお父さん…。

いや、発明というよりもその方法は元々、野比家代々に伝わっていたらしいわ。

でもあまりに危険すぎて解読不能な暗号にして封印していたとか…。

だけど、過去の野比家の人間で唯一それの解読に成功したのではないかとされる人物がいるのよ。」

 

「それは誰なんだ!?まさか僕!?」

「いいえ。あなたのお母さんよ。」

なんと玉子であった。

 

「あなたのお母さんは野比家に嫁いで間もないころ、片づけをしていたら変な紙を見つけたそうよ。

妙な絵と記号ばかり書いてあったそうだけど、徳川埋蔵金の暗号かと思ってパズル感覚でやっていくうちに国士無双拳の修得方法だとわかったそうだわ。

その後、あなたのお母さんは主婦として生活する傍らで家の中で修行に励み、国士無双拳を修得。さらに改良して片岡流必殺拳を編み出したということがタイムテレビで明らかになったわ。」

 

長年、謎に包まれていた”暴走のび太”の真実が明らかになったような気がした。

そういえばあのときの玉子が”暴走”をコントロールしていたのである。

あのドライもんですら歯が立たなかった。

だが、のび太は力をコントロールできない。

その結果、全てを破壊する狂気の戦士と化すのである。

おかげでドライもんとの破壊活動もあって地球は何度も滅びた。

その地球が何度も再生されているのかは、あえてここでは問わないことにしておく。

 

さて、これからのび太は国士無双拳を修得するために修行しなければならないのである。

その修行方法は相当過酷なものであるのは間違いないであろう。

目の前にいる2人がどんなことを自分にするのか、そう思うとワクワクとドキドキが止まらない、とのび太は考えていた。

決して下品な意味ではないと願いたい。

だが、のび太の思惑はあっさりと外れることになる。

「じゃ、私と静香さんは東京に戻るから、のび太さんはここで頑張ってね。」

「え…?」

「ここで1ヶ月くらい生活していれば国士無双拳なんて簡単に修得できるはずよ。ちょうどここは無人島だし、修行にはもってこいの場所よ。」

ちょっと待て…。何故そうなる?

修行とは言え、僕は国士無双拳のことなんてわからないよ?

だいたい、ここは何もないじゃないか。

何もないのに国士無双拳とやらを身につけるなんてバカげてる!

と、のび太は言いたかった。

しかし、2人はそんなのび太の話を聞くまでもなくドラミが出したどこでもドアで瞬時に去ってしまったのである。

「………………

 

ドラえも〜〜〜ん!!!!

 

 

 

 

「……ふう、いい夢だった。…あ、あれ?」

ジャイアンがようやく長い眠りから目を覚ました。

時間にすると約58時間睡眠中だったらしい。

部屋を見回すと普段と何も変わらない光景があった。

「どうやら…やっぱり夢だったんだな。あんなことがあるわけないよな。朝ご飯でも食べて学校に行くか…。」

と、部屋のドアが開いた。

「お兄ちゃ〜ん!やっと起きたのね!リサイタルは大成功よ!」

「ジ…ジャイ子?…夢じゃなかったのかあ!?」

「何言ってんのよお兄ちゃん!寝ぼけないでよぉ!部屋だけは改造されていないからって寝ぼけてたら困るってばあ!」

どうやらジャイアンは今までのことが夢だと思っていたようである。

しかし外は練馬にそびえる鉄の城、剛田雑貨店、それを中心に動く人間の姿があった。

その剛田雑貨店にいるジャイアンもようやく気を取り戻し、あの力が体の中を駆け巡った。

「よおおおおおおおおおおおし!!!!今度は宇宙を目指すかあ!!!!!!!」

「でもね、お兄ちゃん。世界各国がお兄ちゃんに対してケンカを売ってきそうなのよ。」

「アメリカ?北朝鮮?んなもんギッタンギッタンのメッタメタにしてやんよ。」

「あ…ケンカと言うよりお兄ちゃんと話がしたいっていうことかも。ほら、これがアメリカの大統領からのFAX。」

なんと、アメリカの大統領が剛田雑貨店に直接FAXを送信したのである。

FAXは直筆で書かれており、胡散臭い日本語訳もついている。

「うーん…字が汚くて読めないな。しょうがないけど頑張って読んでやるか。」

 

前略

剛田武様、この度は世界に向けての宣戦布告、ご苦労さまであります。

あなた様の行為によって世界は非常に大変なことになっており、私だけに限らず各国の代表が誠に遺憾の意であります。

我々は一刻も早くあなた様に対し、国際軍による攻撃を行いたいところでありますが非常に残念なことに、

どの国も軍事機能が麻痺してしまい、しまいには「ジャイアン様に逆らったら貴様に核をぶち込むで!」と、

申し立てる軍人も多数おります。

つきましては、あなた様の宣戦布告に対し、我々は話し合いによる解決をしたいと考えている次第でございます。

どのような条件があってもかまいませんから、これ以上世界に被害をもたらすような事態だけは避けたいのであります。

話し合いによって、あなた様がご満足していただけるような結果になればこれに勝る喜びはございません。

我々はあなた様に対し金銭及び領土の譲渡など、さまざまな要求を受け入れる準備が整っております。

是非とも、あなた様が妥協していただけることを強く望んでおります。

話し合いは我々各国の代表が直接あなた様のところへ訪問していただく形となりますのでご了承くださいませ。

日時はあなた様のご希望の時間でかまいません。

では、剛田雑貨店で会いましょう。

アメリカ大統領 クリキントン

 

「ケッ!金とか土地とか、べ、別に俺様はそんなもん望んじゃいねえ…。」

ジャイアンはFAXをクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げた。

「俺様は腐敗した世界を救ってやっただけだ…。俺様の歌によって民族紛争もテロも人身売買も環境破壊も国の借金も全て消えた。」

世界はパニックになった。しかし、確かにジャイアンの言うとおり世界が抱えていた問題は消えた。

多くの人間がジャイアンそのものを崇拝することによって、醜い争いをやめるようになった。

生きるのはジャイアンのため、と思うようになったからである。

もちろんジャイアンに理解を示していない人間だっている。

そういう人間は時間の経過とともに消えるのだろう。

ジャイアンの歌によって発生した殺戮が結果的に世界平和へと繋がってしまったように。

「話し合いか…暇だから相手にしてやるか。」

ジャイアンは一応各国の代表との話し合いはすることにした。

 

一方、日本、いわゆる練馬の外は世界各地とは異なる状態となっていた。

人々はジャイアン教の存在を否定し、新聞やテレビもジャイアン教については全く触れていない。

これが日本人体質なのだろうか。

日本人にとってはジャイアンなどただのガキ大将にしかすぎない。

そんな気質がジャイアンの歌を受け入れなかったのかもしれない。

だが、これが後にさらなる悲劇を招くことになるのは言うまでもないことであろう…。

 

ジャイアン教についての情報は超重要機密として日本政府だけで取り扱われている。

その機密を握る一人の天才少年がいた…。

 

 

彼の名は出木杉英才…。

 

 

続く

 

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