新ドライもん・のび太の国士無双伝説
第9話 練馬首脳会談
作:T@S
出木杉は航空自衛隊で使用されている戦闘機で練馬へ向かっていた。
同じ都内であるにも関わらず、飛行機を使用しないとあの場所には近づけないからである。
また、武装している機体だと撃墜されかねないという危険性も配慮して武装は完全に解除されている。
ここまで来て落とされては何にもならない。
これらの情報は出木杉を通じて、出席する代表者の耳にも伝わっている。
出席者は皆、無抵抗の状態で向かうわけである。
ちなみに、戦闘機を操縦しているのは出木杉である。
表の首相である巨泉ジュンイチローはおるすばんを任されたわけである。
その出木杉、小学生であるにも関わらず、操縦はかなりの腕前である。
しかし、実は無免許なのである。
それを指摘した者がどうなるかは言うまでも無い。
「何が飛んできてもかわしてみせるさ…。」
出木杉の戦闘機は音速で学校の校庭へ飛んでゆく。
絶望という名の着陸地へ向かっているとわかっていながらも…。
「出木杉首相…あなたの行動に…感動したっ!!」
巨泉は官邸でひたすら泣いていた。
こうして、代表者たちは学校の校庭へ到着した。
今回の出席者は出木杉をはじめ、アメリカのクリキントン大統領、ロシアのオソロシヤフスキー大統領、北のキム総書記、フランスのオフラン大統領、中国のリー提督の6名である。
本当ならもっと出席するべきなのだが、代表者が急病にかかったとか、ジャイアン教の信者になったとか、武装していたため撃墜されたとか、いろいろな大人の事情があるようだ。
クリキントン大統領は今回の会議を真っ先に提案した第一人者である。
アメリカ国民からの人気も高い実力派ではあるが、最近では愛人との不倫疑惑があるらしい。
オソロシヤフスキー大統領は大国を治めていることもあってかなりのタカ派で有名。
ジャイアン教に対しても真っ先に攻撃を仕掛けようとしたものの、軍隊が全く動かず涙目となってしまった。
おかげでかなり苛立っている様子である。
キム総書記は某北の国の支配者。
そのブクブク太って脂ぎっている不健康そうな体系からは貧しい国家の中で、唯一自分だけが贅沢していることが伺える。
そんな彼が何故わざわざ会議に出席したのか、理由は不明である。
オフラン大統領は共和制国家の首脳のくせに、中世の貴族のようなお洒落好きの男である。
尊敬する人物はルイ16世であり、本人は生まれ変わりだと自称しているとかしてないとか。
中国のリー提督は、最近自国で反乱が起きた所為でその処理に追われて、てんてこ舞いだったようだ。
さて、校舎の玄関から巨大な影が現れた。
その出っ張った腹を見ればわかるが、ジャイアンである。
「皆の衆、わざわざ遠くから来てもらって、ご苦労様と言いたい所だぜ。」
「What? Can you speak English?」
この会議を行うに当たって、大きな問題があった。
それはジャイアンは日本語しかわからないこと。
会議が成り立たない状況なのだ。
「ああン!?日本語で話せよ!!言うこと聞かないやつはぶん殴るぞっ!!」
ジャイアンの怒りがもう頂点に達しそうだ。
「落ち着きたまえ、武君。英語だけでなく10カ国語を話せる僕がいるから問題ない。」
「誰だてめえは!?部外者はお断りだあああ!!…って、あ、あれ?」
ジャイアンは出木杉を見て表情を変えた。
その表情からは本来のジャイアンの姿が戻ってきたような感じがした。
「で、出木杉…?何故お前が…!?」
ジャイアンは出木杉のことを忘れていた。
全く眼中になかったのだ。
さらにこの場に来るんだから、思考がパンクして気が狂いそうになる。
「驚かせてしまってすまない、武君。実は僕は日本の影の首相でね。こういう状況になったからには、僕が代表者として出席する。」
「出木杉…お前に俺様の歌が効かなかったとは…!!」
「僕は君とは違うのだよ。安心したまえ、君。僕は今ここにいる連中と違って好戦的な態度ではない。むしろ、君と友好関係を築きたい。」
「ゆ、友好…だと?わざわざ俺様の陣地に入ってきながらおめでたいやつだな。」
ジャイアンは必死に冷静さを取り戻そうとする。
「いいだろう、お前も会議に混ぜてやる!しかしな、変な真似をしたら一生陽の目を見れなくしてやるからなっ!!そう、あの女と男のように…クククク…!!」
「……!」
ジャイアンは意味深なことを言いながら出木杉を迎え入れたのであった。
そして、出木杉は首をこちらに向けた。
「と、いうわけで安心したまえ、読者の諸君。ここからは全て日本語吹き替えでお送りする。」
一行は学校の会議室へ入った。
そこには助手担当の先生とジャイ子が待ち受けていた。
「会議室へようこそ。お茶でも飲んでごゆっくり。」
まるで先生は他人事のような態度である。
玉子と死闘を繰り広げたかと思えば、ジャイ子の下っ端にされたり、と謎が多いキャラである。
さて、出席者の机には人数分のお茶と冥書が置かれていた。
「諸君、会議の前に冥書を朗読する。」
1.あなたのものはジャイアン様のもの 空き地でノコギリ頭の少年がラジコンで遊んでいた。周囲に迷惑をかけている。 おまけにニヤニヤしながらやっている。通行人は呆れる。 そこにジャイアン様が通りがかられた。ジャイアン様は少年のところへ歩いていかれた。 そして、ジャイアン様はいわれた。 「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの。」
ラジコンは木に衝突した。案の定ラジコンは壊れた。 「いいか。これからは人に迷惑をかけるんじゃないぞ。」 ジャイアン様はまた一つ、平和に貢献された。 つづく |
2.ジャイアン様の説得 ある少年は、ジャイアン様の頼みを断ろうとしていた。 しかし、ジャイアン様はこう言われた。 「心の友よ〜」 少年は感動し、頼みを聞いてくれた。 ジャイアン様は、友でなくとも、心の友だということで説得されたのだ。 つづく |
3.ジャイアン様の兄妹愛 これはジャイアン様とその妹、聖女シスタージャイ子様にまつわるいい話である。 ある日、ジャイ子様は漫画家という職業を通じて恋の病を患っておられた。 ジャイアン様は感動された。 そして、ひたすらジャイ子様の恋を実らせるために努力を尽くされた。 しかし、これをお知りになったジャイ子様は恥ずかしがられ、ジャイアン様に怒りをぶつけてしまわれた。 ジャイ子様は漫画の原稿を放り出されてしまわれた。 それをご覧になったジャイアン様は必死で原稿を追われた。 ジャイアン様は雨の中、雪の中、原稿を集められるために無我夢中であられた。 ジャイアン様はこう言われた。 「かわいい妹のためにお兄ちゃんはがんばる!!」 ジャイ子様は感動し、真の兄妹愛にお目覚めになった。 これが、聖女シスタージャイ子様が誕生された瞬間なのである。 つづく |
4.世界をお救いになったジャイアン様 ジャイアン様はかつて、この世はおろか、宇宙や未来、白亜紀、氷河期、さらにはパラレルワールドを巡られた。 そこでは、ジャイアン様は悪党どもをジャイアニズムを通じて回心させた。 はっきり言っておく。 ジャイアン様がいなければこの世は存在しなかった。 ジャイアン様が数多の世界を巡られたからこそ、この世がある。 もしあなたがジャイアン様に対して少しでも不信感があるならば、今すぐ告白しなさい。 そして、ジャイアン様による洗礼を受け、忠誠を誓い、ひれ伏しなさい。 それによって、あなたはジャイアン様に救われる。 つづく |
「以上、今日の冥書朗読を終わる。さあ、会議をおっぱじめようか。」
ジャイアンによる小芝居がやっと終わった。
「(おかしいな…。親に関する記述がどこにも見られない…。やはり、あいつは…)」
「さて、ここからは質問タイムだ。お前らが俺様に言いたいことを聞いていこうじゃないか。」
まず最初に、アメリカのクリキントン大統領が質問した。
「剛田様…と呼べばいいのかね…?あなたは我々がどのような行動をすれば納得していただけるのか…。」
続いてロシアのオソロシヤフスキー大統領。
「直ちにこのような世界平和を脅かす行動をやめていただこうか。」
北のキム総書記。
「……………。」
何故か無言である。
フランスのオフラン大統領。
「ミーはアンタにはついていけないザマス。これ以上ディッシュがマズくなるのは勘弁してほしいザマス。」
中国のリー提督。
「これは立派な侵略アル!謝罪と賠償を要求するアル!」
最後に出木杉。
「大陸が移動するという異常事態に陥った以上、我々は君に従うしかないのかもしれない。しかし、僕は君に聞きたい。何故、君がこのような力を得たのかということを…。」
「お前らの質問はこれで終わりか?本当にそれだけでいいのか?」
ジャイアンは得意気に語り、肩をなでおろした。
「さて、諸君。質問を聞いたがどれも低レベルすぎて答える気にもならん。で、俺様が言いたいことはもうわかったよな。」
一同が固唾を呑んだ。
「お前らの国は全て俺様の物だ!!今すぐこの契約書に血でサインをしろっ!!今すぐに、だッ!!」
一同の顔が凍りついた。
もはや会議ですらないこの発言。
いったい自分達は何のためにここに来たのかすらわからなくなってしまいそうだった。
アメリカのクリキントン大統領は立ち上がった。
「剛田…いえ、ジャイアン様。私はあなたの仲間になりたいのです。是非、契約書にサインさせてください!!」
「んなバカなっ!!」
オソロシヤフスキー大統領はすぐさま反発する。
「貴様、やすやすとこいつの仲間になる気かッ!?ならば、今すぐ貴様を始末する!!」
オソロシヤフスキー大統領は隠し持っていた拳銃を取り出した。
「……!!」
会議室が凍りついた。
さすがのジャイアンも驚きを隠せなかった。
「やべ、も、持ち物検査をやるのを忘れてた…!」
初歩的なミスによって絶体絶命の状況になってしまった。
「ふっ、元はと言えばこの太ったガキが全ての元凶だな…。よかろう、先にお前を消してやろうか。」
「腐ってもロシアの大統領…。その行動はさすがの僕でも真似はできない…。」
出木杉は冷静ながらも彼を褒めていた。
「や、やる気かお前!?俺は世界の支配者になる…いや、なった男だ!!テメーのようなハゲが敵うはずがねえんだよ!!!」
汗を流しつつも強気を保っているジャイアン。
しかしオソロシヤフスキー大統領の暴走は止まらない。
「貴様が世界の支配者だと…!?ならば、我がロシアが貴様を殺して世界の支配者になろう!!」
オソロシヤフスキー大統領は銃口をジャイアンに向け、指を引き金に入れた。
「お、お兄ちゃん…!」
ジャイ子ですら動けない。
先生はオソロシヤフスキー大統領の恐怖的な姿にただ足を震わせるだけであった。
「地獄に落ちるんだな、この悪魔め!!」
BAAAAAAAN
続く