第五部
第0話
事始斯如(ことのはじめはかくのごとし)
「
「ついに…ついに追い詰めたぞ。出木杉英長(できすぎひでなが)!!!」
ジニアスマンが叫ぶ先には仮面をつけた男が立っている。
「ジニアスブレード!!!」
第四部の最後で妖刀とともに持ってきた脇差を改造したらしい剣を抜き放ち、仮面の男に切りかかる。
「馬鹿め」
男が指を鳴らすと巨大な腕が現れ、ジニアスマンをぶっ飛ばす。
「う… うう…」
ジニアスマンは壁にめり込んで動きが取れない。
「いくらなんでも単独でここに来たのはまずかったな。我とこの巨大ロボット『ゴールドファイヤー』がいる限りここは落ちぬさ」
不適に笑う仮面の男の後ろには金色に輝く巨大なロボットがいる。
「いくら我々鉄面党の幹部や巨大ロボット達を打ち倒してきた君達でも一人となるとここまで弱いものなのか…」
男は空を見上げ、物思いにふける。
「たしか、こんな雨の日だったな。2ヶ月半前のあの日も…」
そう、事の始まりはこのときより2ヶ月半前、元バイオE-Nのとある研究施設より始まる。
「待て!!」
「逃げるな!!」
一人の男を先頭に必死で逃げる40人近くの人物、彼らは何故か全裸だ。
後ろからは数人のTPが追って来る。次々と撃たれ、斃れる人物。
その彼らの顔を見ると、何故か同じ顔の人物が何人も見つかる。
そう、彼らはバイオE-Nによって作られたクローン、しかも薬物や遺伝子改良などを施して作られた強化クローンなのである。
なお、第四部二十二話に登場した出木杉天才のクローンが本物と比べてタフガイだったのはこの研究所で作られた筋肉強化薬などの薬物を使っていたからである。
いつの間にかTPの追撃を振り切り、先頭の男が振り向くと、もうついて来たものは20人近くに減っていた。
「我々は生きているのに… こんなにも必死で生きようとしているのに… 何故…」
その後も彼らは深い森の中を歩き、深い雪の中を歩いたが、一人、また一人と斃れ、とうとう人数は先頭の男を含め14人にまで減ってしまった。
がんばれ、生きるんだ、きっと僕達が生きれる場所がある。
そのような励ましの言葉を何度聴いたかわからない。
そして今、1人の命が尽きようとしている。
力尽き、ゆっくりと斃れる男。
仲間が必死に声をかけるが、もう彼には何も聞こえず、動く事もない。
「何故だ… 我々造られたものには生きる権利すらないというのか…」
先頭の男がそう呟く。
「神よ… あなたがお造りになった人間は我々を滅ぼそうとしている。もし全ての生命(いのち)が平等ならば、どうして我々を助けては下さらぬのか…」
空を仰いでそう祈るが、天は何も答えてはくれない。
「どうしてなんだ!!!」
もう一度天に向かって叫んだ瞬間、チカリ、と何かが光った。
太陽の光が雪で反射したのだろう、と男は思った。
と、その瞬間、今まで進路を覆っていた厚い雪雲が突如として割れ、目の前に大きな、と言うにはあまりにも大きすぎる巨大な城が見えた。
中世ヨーロッパのような、いや、ところどころ未来的な風貌の外見だった。
何故こんな所に城があるのか、一体誰が作ったのか、そんなことは関係が無かった。
生き残った13人はその最後の希望である城を目指し、死力を尽くして歩いた。
城の中は全自動でエアコンが働いているらしく、今まで雪道を歩いていた彼らにとっては天国のような暖かさだった。
今まで先頭を切って歩いていた彼は奥の部屋にいた。
玉座には白骨が腰掛けており、その手には一通の手紙があった。
『この城にある力を使い、世界を守るも滅ぼすもよし。全ては神とその十三人の御使いのお思し召しである』
手紙の最後に署名がある。
Hidenaga.Lee.Vogler
「この城にある力…?」
と、一人の男が駆け寄ってきた。
「凄いものを見つけた。食糧倉庫だ」
その場所に行くと、大量の食料の入った段ボール箱がありその奥には全世界の食料品の名前が書かれた機械がある。
どうやら食糧生産装置らしい。
と、後ろから誰かが走ってくる。
「武器庫があった。弾薬もたんまりあるぞ」
その部屋は実弾兵器、ビーム兵器が立ち並び、おくには弾薬製造機がある。
「この部屋は?」
武器庫に行く途中でなにやら厳重な扉を見つけた。
そこにはいくつもの巨大な試験管が並び、中には人間の胎児のようなものが入っている。
「ここは…クローン兵士生産工場か!!!」
と、誰かが大慌てで走ってきた。
「地下にロボットがある」
「ロボット?」
「ああ、製造装置もちゃんとある。…あ、」
男は彼を呼ぼうとして口ごもった。
だが、彼にはすでに名前があった。よく施設で呼ばれていた番号、『dekisugi-1』と恐らくこの城の城主だったあの白骨死体『ヒデナガ=リー=フォーグラー』。彼はその名前をつなぎ合わせたのである。
「英長だ。出木杉英長。それから皆、服を着たほうがいいぞ」
「そうか。しばらくしたらこっちへ来てくれ。」
城の地下には人間より少し大きめの戦闘用ロボットがぎっしりと並んでいた。
陸戦、海戦、空戦、宇宙戦用と勢ぞろいである。
まるで彼らを待っていたかのように…
「これだけじゃないぞ。奥を見てみろ」
男が照明を点けると、奥に巨人が見えた。
いや、それは巨大なロボットだった。全部で13体ある。
「そうか…これがあの手紙に書いてあった…」
それを見た彼の目には明るい希望の光と沸々とした復讐の炎が宿っていた。
「我々は生きている! 紛れも無くここに生きている!!」
彼を除いた生き残りは彼の声に必死に耳を傾けている。
「しかし、人間どもは我々をバイオE-Nのクローンだと言う理由で残虐非道の限りを尽くし、その存在をこの世から完全に抹消しようとした。これが許される事だろうか? 否!! 許される事などでは断じてない!!!」
一呼吸置いてからまた話し出す。
「生きることに優劣などあろうか、ただ一つの生を謳歌するいのちの思いに優劣などあろうか? あるはずか無いのだ!!! しかし、しかしだ。人間は我らを見えぬ天秤の上に我々を乗せた。それが彼らの権利と言うのならば、逆もまた叱り。我らがその権利を有す事も可能なので…」
「この台詞、どっかで聞いた事無いか?」
「ああ。確かなんかの映画だったような… キャ○ャーンだっけ?しかも丸パクリだよ…」
いつの間にか彼の目が二人に向いていた。
「「あ… その… スイマセン」」
また一呼吸置いてから話し出す。
「我々はここに一つの決意をなす。それには皆の同意が必要だ。ここに十三個の仮面がある、我についていくものは仮面を着け、そうでないものはここから去れ」
13人全員が仮面を着けた。
「決まりだな。…ではただいまよりここに、我々の組織、鉄面党を起こす!!! …だがその前に、我は21世紀へと向かう。我のオリジナル『出木杉英才』と会ってくる」
かくして、また新たなる戦火の火種は起こり、ドラえもんたちはまたもや巻き込まれてしまうのであった。
※ 13体の巨大ロボットの設定は各作者に任せますが、できれば名前の先頭に色の名前をつけてもらえれば幸いです。